淡白にして加糖コーヒー

ぶっ,と噴き出した。我ながら迂闊なことで情けない話だが,しかし駄目だ,これは…駄目だ。


インスタントコーヒーを使ったとしてもこれはありえない。香りからしてろくでもない,ああ,何と下世話で嫌らしい味なんだ。


苦さと渋さを薬味としてしか考えられない彼女の,己を癒する砂糖たちしか愛せない哀れさよ。


その淹れた当人はこちらの惨事に気付いた風もなく,背中に負った蝙蝠の手を広げたりすぼめたりと弄びながら,窓越しの夜空を見上げ,そしてコーヒーを飲み下した。


彼女はきっと無表情だろう。
十把一絡げに押し込まれていく砂糖たちも不憫なものだ。

世界を敵に回して,少年

お互いの領分に踏み込むのはナンセンスだと説く君たちの,
頭が悪いことを哀れみ合う君たちの詭弁にうんざりだから,


誰かに分かって貰えた覚えのない僕は君たちの哀れな理解力を嘲り,
そして僕は君たちを理解してその哀れな理解力の裏を掻いてやるさ。


君たちの影を縫い付けていられるおかげで僕は立ち続けていられる。
ありがとう。あるいはさようなら

WINGS OF BLACK, FEATHERS OF LIGHT

「忘れちゃないかい?」
 彼は私の額にずいと人差し指を突き立てた。伏せていたかった私の顔は残念ながら敢え無く仰け反り,彼の目と已む無く視線が合う。
「誠実さも,真面目さも,所詮は手段だってことをさ」
 フフフ,と彼は笑う。その背中の黒い両翼が微かに揺れている。全身を使って彼は私を嘲う。
「君も少なくとも昔はそうだったんだろうに?」
 今はどうしてこうなんだろう?
「君は光の羽根を背負えやしないのさ。絶対に。だって」
 彼は人差し指をたわめた。そして私の額を弾く。
「何だかんだ言って,君は君のココロを望んでる。そうさ君は死ねない。ほんっと残念だったねー?」
 仰向けに倒れながら私は一つの溜息をついていた。
 到底うんと言えることじゃない。しかし,でも,今現在,私の手では,光の羽根に届かない,かすめもしない,のは,きっと,確かだと,…思った。