ヤミ
誰かがその言葉を白刃に構え私を貫き切り刻んだ。私の物語はそこで閉じる。 私の物語がそして成る。 私の物語をここに贈る。最後に記すは怨念の謝辞――果たして循環を続ける紡ぎ手の葬儀。
お互いの領分に踏み込むのはナンセンスだと説く君たちの, 頭が悪いことを哀れみ合う君たちの詭弁にうんざりだから,誰かに分かって貰えた覚えのない僕は君たちの哀れな理解力を嘲り, そして僕は君たちを理解してその哀れな理解力の裏を掻いてやるさ。君た…
「忘れちゃないかい?」 彼は私の額にずいと人差し指を突き立てた。伏せていたかった私の顔は残念ながら敢え無く仰け反り,彼の目と已む無く視線が合う。 「誠実さも,真面目さも,所詮は手段だってことをさ」 フフフ,と彼は笑う。その背中の黒い両翼が微か…
ああそれからそこから不思議と笑えるってのもあるんだけどねぇ。 卑怯者が己の卑怯さに絡め取られてしまうことに気付かないのが。
あたしは別に卑怯かどうかなんてどうでもいいんだけど。 卑怯者が威を借る正義が何時だって気に食わないだけ。
また被害者ぶって強さを得ようとする。 それが卑怯だって思えないのかな。
自分不在の世界を知りたいか ならば対照実験を行うことだ実験道具は準備したか (ナイフではためらい易く失敗も考えられる,苦しくとも薬物注射が成功可能性は高かろう) 観察者は用意したか (観察は長期に渡る上に難解な状況も予想される,適度に疑い深く…
ふと転落した水流の中に そのまま身を委ねているこの流れから離れることができず この流れの中で体を捻って踊って この流れが何処に至るかを知らず この流れにただただ流され続けてたった一度の時間微分に安住し 僅かな無限の時間積分を舞って飽きもせず薄笑…
可能性に挑戦するあなたを見て嘆息するのだ 可能性の可能性を疑わぬ事にあたしは失笑するのだ 可能性でしか先を語り得ぬあなたは ちっぽけな可能性に安住するがお似合いだ
花を摘んで結んで繋げて組んで織り上げ そして虚構はあわれ弾幕を語る 嗚呼哀れ 憐れ
映像と踊り映像に踊らされ真実を見失って私はあわてふためき何かをつかもうともがき苦しみそして私は映像を躍らせて誰が何が中心に据えられ支配しているのかそれは既に分散し拡散し欠片の一つを私も握っているのだけどそれがどれ程大きいのかあるいはどれ程…
魔王はヒーローの内に秘められた勇者の力を恐れていました。 だから魔王は,彼がそれに目覚める前に殺してしまおう,と考えました。 そこで魔王は部下に命じてヒーローの恋人をさらわせました。 勿論,彼をおびき出す為です。ヒーローは悩みました。 未だ未…
旭日を見上げて僕は安堵のため息を吐いた 陽が昇り光がこの地表を照らし続ける限り 僕は未だ走り続けることができるのだからこの大地をこの僕の影をして覆わんが為に
あらゆる力が抜け失せた友を焼いてかじって頬張る。 やりたいことを生きる為に,あたしは貪欲になろう。 不味い肉でも飲み込んで明日を生きる力にするんだ。
死後の世界は忘れられた。 黄泉の国は彼岸に逝った。 弔辞は最早死者を労わることはない。 そして生者の傷を舐め合いえぐり合う劇薬に成り果てる。
時間が戻ればいいのに,と僕は思った。 この間3秒。
夢と希望の虚飾に幻滅し己を投入する先はしかしただ夢物語の為の抵抗でしかなく己で己に幻滅して目的を喪った虚飾の戦闘を演じそして舞踏に飽きた道化は舞台を去り空しい現の中に溜息を吐く日々に回帰もしよう。
死を忘れ生きるか。 生を忘れ死すのか。否,忘れられない。 否,忘れない。死せる命,生きた屍。 今も生命はシュレディンガーの箱の中に。
全ては両極の狭間の中に。
報われたいが為のドリョク。 そんなの,先ず報われない。そんなに,心臓が欲しいなら。 先ず誰かを探して,それから。 殺して捌いて,つかまなきゃ。 手に入る筈がないじゃん,ね。そうそう。 折角だから食べてやんなさいね,その彼の肉も。
面倒なことと知ってることをすること。 あるいは全く新しく何かを始めること。 めんどくさい。あたしはきっとヒトよりずっとずーっとめんどくさがりだ。今までやり続けてきた面倒を中途でやめてしまうこと。 新たな羽ばたきを想って飛び立つ意志を抑え込むこ…
木に登ってごらん 枝に立ってごらんあなたの足は体は 地を離れ宙に浮き 星々の中に己を見てふと暗転して痛たた…。
かつて誰が何と言ったのか,だなんてことは ついぞ僕は知らないままさようならだけど, 自分の言葉以外に自分の意志が宿る筈がないんだ, と,キーボードは最期に思った。享年五歳。
堂々巡りの渦巻きの中で, 延々ともがき苦しみ泡を吐いては舞って踊って水を飲んで。ちょっと意識が戻った。 いつの間にかぼうっとしてた。不思議な味がする,と思った。 海洋深層水?
グローバリズムという名のローカリズムに嘆息。
そう,真実なんてものは尽く嘘っぱちだ。
俺は子供の頃何でもできると思った。 だから世界を征服しようと考えた。 でも気付いたんだ。 俺は既に世界を征服してたんだよ。 悲しい気分だったさ。 ああ俺は本当は世界を征服することすらできないんだ,ってね。
僕は死なないよ。みんなが死なせてくれないんだ。
お前の顔についてんのは他人の口真似を繋ぎ合わせるだけが取り柄の鸚鵡の嘴か。
その人はその虫を見て,さっき見た虫かも知れないと思った。 その虫はその人を見て,何かでっかいもんがいるなと思った。