WINGS OF BLACK, FEATHERS OF LIGHT

「忘れちゃないかい?」
 彼は私の額にずいと人差し指を突き立てた。伏せていたかった私の顔は残念ながら敢え無く仰け反り,彼の目と已む無く視線が合う。
「誠実さも,真面目さも,所詮は手段だってことをさ」
 フフフ,と彼は笑う。その背中の黒い両翼が微かに揺れている。全身を使って彼は私を嘲う。
「君も少なくとも昔はそうだったんだろうに?」
 今はどうしてこうなんだろう?
「君は光の羽根を背負えやしないのさ。絶対に。だって」
 彼は人差し指をたわめた。そして私の額を弾く。
「何だかんだ言って,君は君のココロを望んでる。そうさ君は死ねない。ほんっと残念だったねー?」
 仰向けに倒れながら私は一つの溜息をついていた。
 到底うんと言えることじゃない。しかし,でも,今現在,私の手では,光の羽根に届かない,かすめもしない,のは,きっと,確かだと,…思った。