淡白にして加糖コーヒー

ぶっ,と噴き出した。我ながら迂闊なことで情けない話だが,しかし駄目だ,これは…駄目だ。


インスタントコーヒーを使ったとしてもこれはありえない。香りからしてろくでもない,ああ,何と下世話で嫌らしい味なんだ。


苦さと渋さを薬味としてしか考えられない彼女の,己を癒する砂糖たちしか愛せない哀れさよ。


その淹れた当人はこちらの惨事に気付いた風もなく,背中に負った蝙蝠の手を広げたりすぼめたりと弄びながら,窓越しの夜空を見上げ,そしてコーヒーを飲み下した。


彼女はきっと無表情だろう。
十把一絡げに押し込まれていく砂糖たちも不憫なものだ。