陰極線は仮想奴隷を作り出す

映像と踊り映像に踊らされ真実を見失って私はあわてふためき何かをつかもうともがき苦しみそして私は映像を躍らせて誰が何が中心に据えられ支配しているのかそれは既に分散し拡散し欠片の一つを私も握っているのだけどそれがどれ程大きいのかあるいはどれ程小さいのかは他の誰かを殺して奪ってもう一つの欠片と比べてみなければきっと見極めることはできず私はどれ程の何に隷従し私はどんな誰を操作しているのかを知ることがないまま縛り縛られ呼吸の連動を繋ぎ止めていると思うのだけれど実の所もう飽き飽きな気分だ。
先ずあなたを殺そう。

もう一つの勇者と魔王

魔王はヒーローの内に秘められた勇者の力を恐れていました。
だから魔王は,彼がそれに目覚める前に殺してしまおう,と考えました。
そこで魔王は部下に命じてヒーローの恋人をさらわせました。
勿論,彼をおびき出す為です。


ヒーローは悩みました。
未だ未だ彼の力では魔王に敵いません。
旅の道連れになってくれる人を探しても誰も相手にしてくれません。
あの恐ろしい魔王と戦うなんてとんでもない,と。


いつの間にか酒場で自棄酒を飲み始めるようになった彼は,
ある日ついつい飲み過ぎてしまいました。
そしてあろうことか酒の勢いで暴れ始めました。
周りのみんなが彼を止めに入りますが,もう彼の耳には届きません。
無理矢理押さえ込もうとしても尚彼は暴れ続けます。
押し合いへし合いの意地の張り合い。
がむしゃらになっていた彼に,とうとう転機が訪れます。
勇者の力が目覚めたのです。
でも彼は酒に酔っているせいでコントロールを失ってしまっていました。
勇者の力は破壊的に膨張し,酒場のみならず街を一つ壊滅させました。


一つ,また一つ。
彼に酒を飲ませた街が消えていきました。


部下の報告を受けて,今度は魔王が悩みました。
悩んだ末に出た結論はただ一つ。
ヒロインを彼のもとへと帰らせたのです。


ヒロインが帰ってきたおかげでヒーローは取り敢えず無茶をしなくなりました。
しかし周りの人々の冷たい視線に耐えることができずに,
彼は酒を手放せなくなっていました。
それから程なくして,酒の飲み過ぎで帰らぬ人になりました。


あの時ばかりは自分こそが魔王だという自信を失くしてしもうたわい。
後にヒロインを娶った魔王は,当時をこう述懐して呵呵大笑するのです。

繰り返し繰り返し繰り返される繰り返し

旭日を見上げて僕は安堵のため息を吐いた
陽が昇り光がこの地表を照らし続ける限り
僕は未だ走り続けることができるのだから


この大地をこの僕の影をして覆わんが為に